創業100周年を迎えて

創業者 下中弥三郎 平凡社は下中弥三郎(1878-1961)により、1914年(大正3年)に創業されました。兵庫県の丹波に生まれ、家が貧しく学校に行けないかわりに百科全書で勉強をした弥三郎の、最初の出版物は自著『や、此は便利だ』という小さな現代用語事典でした。専門知識をふまえて、あくまで皆にわかる「知恵」となる知識を重んじた弥三郎は、「万人に教育を」という願いのもと、1931年には『大百科事典』を刊行。のちに人間文化全般に関わる幅広い分野へと、出版の幅は広がっていきました。

古今東西の事象を文化的・歴史的に横断し、関連づけて解説する「百科事典的好奇心」は、今なお平凡社の基盤です。一過性の情報ではなく、物事そのものの成り立ちをひもときつつ、「なぜ?」という問いに答える出版の理念を、今も大切にしています。また、1963年に創刊された日本初の本格的グラフィック誌『太陽』(2000年休刊)をはじめ『別冊太陽』『コロナ・ブックス』では、写真とデザインを重視したグラフィック表現によって、生活文化を豊かにする編集を目指しています。

平凡社の出版におけるひとつの軸に「アジア」というキーワードがあります。創業者は世界の、とりわけアジアのさまざまな文化の相互理解と発展に貢献したいという志を持っていました。2代目社長の下中邦彦は、その志を継いで、中国・韓国・日本などの東アジアから、南アジア・イスラム圏にいたる東洋の文化を紹介する叢書『東洋文庫』を1963年に創刊しました。現在では『東洋文庫』『平凡社選書』『平凡社ライブラリー』『平凡社新書』『別冊太陽』『コロナ・ブックス』などのシリーズのほか、事典・図鑑および人文・社会科学、生活文化、文芸、美術・デザインなど多岐にわたるジャンルの単行本を刊行しています。

書籍は、広く深く考えるために最適の道具です。平凡社は100年の積み重ねを生かして、温故知新の編集力で、「役立つ教養」「わかるよろこび」を出版を通して伝えていきたいと考えています。過去の蓄積にもとづきながら、現代を映し出し、やがて未来への力となる、一冊の本。名前は平凡でも作るものは非凡――私たちは、そのような出版活動をこれからも続けていきたいと願っています。

2014年吉日 平凡社

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